46プッシュプル・アンプ完成/回路等
(47三極管結合ppアンプ兼用)
昨日、古典管の46を使用したプッシュプル・アンプが完成しましました。このアンプは直熱5極管の47をそのまま挿し換えることによって47の3極管結合のプッシュプル・アンプとしても使用出来るコンパチブル・アンプになっています。
46真空管は以前にも紹介したように、デュアル・グリッド三極管というグリッドが2つある三極管で、4極管としては使用出来ません。第2グリッドをプレートにつなぐとA級動作でシングルで1.25Wの出力ですが、第2グリッドを第1グリッドにつなぐとB級動作として使用出来、プッシュプルで20Wもの大出力が取り出せます。
今回は第2グリッドをプレートにつないだプッシュプルとしました。
A級動作の場合、規格表ではシングルでEp(プレート電圧)250V、Ip(プレート電流)22mA、Eg(グリッド電圧)-33Vとなっています。Egが-33Vと、2A3や45に比べるとバイアスが浅いのでドライブも楽です。
プッシュプルの位相反転回路ですが、46のバイアスは比較的浅いため、大がかりなドライブ回路の必要はないと考えました。
位相反転回路には多くの回路があり、簡単なP-K分割による回路も考えましたが、双3極管1本では少し無理です。5極管の6SJ7などと、6SN7-GT(1/2)によるPK分割なら十分ドライブ出来ますが、あらためて使い回しのシャーシに追加の穴を開けるのも面倒・・・元々ドライブ管2本の穴はST管か、GT管です。
そこで考えたのが、6SL7-GTを使用した、右の図のような増幅率の大きいオートバランス型(自己平衝型位相反転回路)です。 一般的にはオートバランス型の場合には(2)の回路を使用します。ラジオ技術で那須好男氏が6V6や、6L6などのプッシュプル・アンプで採用していました。
私も過去に1台だけこの回路でアンプを作ったことがありました。
(1)は、古典型とも呼ばれているもので、グリッドリーク抵抗を供用した回路ですが、バランスが多少悪いために上下の抵抗値を変えた回路も見られます。昔、クライスラーというメーカーの6AR5のプッシュプル・アンプなどにこの回路が多く採用されていました。
バランス面や、歪率などを考えると(2)の回路の方が良いようですが、今回は、あえて古典的な(1)の回路で作り、音を確かめることにしました。気に入らなければ回路の変更は簡単です。こんな実験的なアンプ製作も面白いと思います。
なお、余談ですが有名なKT-66を使用した「QUAD」Ⅱ型の位相反転回路は一見、バランス型にも見えますが、カソード結合型の変形あるいは発展型?と見るべきでしょう。
アンプの回路および解説
【電源部】
電源部ですが、手持の電源トランス(ノグチ/PMC-190M)のB電源の最高電圧のタップは220Vです。少し電圧が低いので、整流管に整流効率の比較的高いSTタイプの5V4-Gを使用しました。多少、プレート電圧が低くても全く問題はなく、かえって古典管ということを考えれば軽い動作の方が、球の寿命も長くなり好都合です。
なお、電圧は多少低くなりますが、5U4-Gや、5R4なども使用出来るよう整流後のケミコンは22μFと少なめにしてあります。勿論、ここはGT管の5AR4などでも挿し換えOKです。5AR4と5V4ではあまり変わりませんでしたので、大きさは46と異なりますがSTタイプの5V4-Gを使用しました。
出力管46のフィラメントの規格は2.5V/1.75Aなので2本点火すると3.5Aが必要ですが、電源トランスのヒーター巻き線は3Aです。しかし、この巻き線は0V-2.5V-6.3V/3Aで6.3Vで3Aが確保出来るので全く問題なく、実際に点火した時の電圧は2.5Vピッタリです。
46のハムバランサーのVRは、プッシュプルということもあり、省略し、22Ωの抵抗2本で代用、2本の抵抗の中点からバイアス抵抗とパスコンをつないでいますが、全くハムは出ません。ノーハムです。
6SL7-GTのヒーター点火ですが、2本で0.6A、このトランスの6.3V/3Aにつなぐと電圧がかなりオーバーするので0.5Ω(5W)のセメント抵抗をシリーズに入れて電圧を6.3Vに調整しています。
【増幅部】
増幅部は前記のとおり6SL7-GTによる、グリッドリーク抵抗を供用した古典的なオートバランス型です。使用した抵抗、コンデンサー等については、壊したアンプから取り出したものが、ほとんどで、あり合わせの抵抗をかき集めたものですので、かなり適当な値であることをご承知ください。
回路図を下記に示します。CR結合のプッシュプルとしては非常にシンプルな回路となっています。
なお、出力トランスですが、2次側の4Ωに8Ωのスピーカーを接続することにより、1次側5KΩを見かけZp=10KΩとして使用しました。
このブログでは、同じ回路のアンプの製作を、おすすめしているものではありません。また、アンプの試聴結果は、個人的な感想です。したがって、このブログ内記事の回路図等は、参考にしないで下さい。同じ回路のアンプを、お作りになるのは自由だとは思いますが、全て自己責任の上、製作くださるよう、お願いいたします。投稿者としての責任は一切持ちません。真空管アンプ製作は、高電圧等による感電死や、火災、火気事故、シャシー加工時での怪我など、注意が必要です。安全第一で楽しいアンプ作りをしましょう。
なお、この回路での46の1本あたりの動作は次のとおりです。
Ep:230V(261V-31V)
Ip:20.7mA(31V÷0.75KΩ=2本分÷2)
Eg:-31V
Pd:4.76W(230V×20.7mA)
と・・言うように規格表の動作例と比較すると、非常に軽い動作となっています。
なお、このアンプは古典管で直熱5極管の47をそのまま46の代わりに挿して使用することが出来る兼用アンプとなっています。
47は直熱の5極管ですが、ソケットは46と同じ5本足のUYで、第3グリッドは管内でフィラメントの中点につながっていて、第2グリッドが4番ピンと46と同じため、ソケットに47を挿すと自動的に3極管結合となります。なお、47を使用した場合の各部の電圧は回路図の( )で明記しました。この場合も47の動作は軽い動作となっています。
【配線について】
配線作業は、シンプルな回路の場合、ほとんど何も見ないで配線を一気にするので、結構作業は早い方かもしれません。
しかし、早くやってしまうこともあり、何年やってもきれいな配線はなかなか出来ません。平ラグなどを使えばきれいに見えるかもしれませんが、私は縦ラグしか使いません。
今回のアンプのシャーシ裏側です。(お見せするほどのものではないので、あまり参考にはなりませんが・・・)
私の配線技術は、この程度で、アース母線も張りません。
最近は目も良く見えないので半田付けが、かなりお粗末・・・
しかし、下記の拡大した写真のように抵抗や、コンデンサーを全て並行、又は直角に配置するだけで、結構綺麗っぽく見えるようになります。真空管アンプは中身が見えなくても・・・やはりスカートの中は綺麗な方が・・・・(笑い)
【試聴結果】
試聴結果ほど適当なものはありません。まして新しいアンプを作るたびに「お~~! これはこれまで作ったアンプの中で1番いい音がするな~~」といつも自己満足する事が多いのです。
今回のアンプですが、私はうるさい音マニアではないので、音の聴き分けや違いが良くわかりません。かなり適当な試聴結果と思ってください。
私は測定器はテスターしか持っていません。歪計などは持っていません。今回の古典的なオートバランスの場合、歪の点ではあまり良くないとの事ですが、私の駄耳では音量を大きくしても全く歪っぽさは感じられません。よく「46は45に音が似ている」と仰る方が多いのですが、私には良くわかりませんが、非常にクリヤーな音です。個人的な感想ですが、これまで46ではシングルと、パラ・シングルを作りましたが、シングルや、パラ・シングルでは繊細な音の感じに対し、プッシュプルは、バランスのとれた音のように感じます。輪郭のしっかりした3極管らしい音だと思います。出力も3W近く出ているようです。
なお、47を挿して47の3極管結合とした場合ですが、これは47が大変身します。47の5極管接続では、古めかしい何ともレトロなブーミーな音なのですが、3極管結合にすると非常にクリヤーな音に大変身します。しかし、良く聴くと47の方がやや音が固いように感じます。
これも余談ですが46と47は全く規格の異なる真空管ですが、見た目は全く同じです。しかし良く中を見てみると46は47の第3グリッドをとれば46そのものに見えます。もしかしたら46と47は同じ製造ラインで作っていたのかな?・・・と思ってしまいます。
今回のアンプは、そのうち、異なる位相反転回路に変更などを考えるとしても、今のところは特に回路変更の必要性は感じませんので、暫くは、このままで聴くつもりです・・・・
----- 参考記事 -----
このアンプ製作に関する投稿記事です。
タイトル下のアドレスをクリックすれば記事につながります。
46プッシュプル・アンプの製作①/準備編
46プッシュプル・アンプの製作②/部品取り付け
46プッシュプル・アンプの製作③
なお、これまで製作した46アンプは、この記事と同じ書庫「46・47アンプ集」内に、46ロフチン・ホワイト・アンプは「ロフチン・ホワイト・アンプ集」の書庫に投稿記事があります。
では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。