史上最小オケのベートーヴェン交響曲全集
( ペーター・シュタンゲル指揮/タッシェン・フィルハーモニー )
ベートーヴェン交響曲全集…私のライブラリーとしては93種類目の全集です。「そんなに同じ曲を集めてどうするの・・!?」という声が聞こえてきますが、直せなくなってしまった病気ですので…
(なお、この病気は、感染力は弱いので他人に感染することはありません。ご心配なく)
さて、今回の全集ですが、当初は購入するつもりもなく、予約もしていなかったのですが、「ポケット・フィルと呼ばれる史上最小のオーケストラによるベートーヴェン交響曲全集!」という言葉につられ、つい、タワーレコードの通販で、購入のボタンを押してしまった。
指揮者のペーター・シュタンゲルと、 タッシェン・フィルハーモニー という楽団は私にとって初めて聞く名前です。
タワーレコードの紹介によると、「ポケット・フィル」とも呼ばれるタッシェン・フィルハーモニーは作曲家・指揮者であるペーター・シュタンゲルによって2005年に創設されたミュンヘンを拠点とする楽団。12名から20名くらいの奏者のアンサンブルで、日本人のオーボエ奏者、町田秀樹さんも含まれています。
元々は弦楽四重奏にコントラバス、もしくは第2ヴィオラを加えた弦パートと5~7人の管楽器、パーカッション、ハープ、ピアノという楽器編成で編成されています。多くはシュタンゲルの編曲による「大編成の作品を小さくして」演奏している。
えっ~~~! 弦パートが弦楽四重奏+1、2名・・上のタワーレコードの紹介写真を見た時に驚いた。(この写真はブックレットにも掲載されている)この編成でベートーヴェンの交響曲を演奏?…そんな感じで購入は控えていたのですが、「史上最小のオケ」に興味をそそられ、「まあ、どんなものか聴いてみるか・・」と貯まっていたポイントを一部使い、買ってしまったのです。
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さっそく一昨日、届いたBOXを全曲、聴いてみました。
ブックレットに曲目ごとの演奏者リストが書かれています。
気になる弦パートですが、第1番から第8番までは、各パートが1名づつで正に弦楽四重奏+1、2名・・・
第9番「合唱」だけがライブ録音となっていて、第九だけはヴァイオリンが追加、第1ヴァイオリン3名、第2ヴァイオリン3名となっています。また、ホルンや、パーカッション奏者等が追加されています。
---- 全9曲の中では第6番「田園」が興味を引く快演?----
さて、全曲をとおして聴いた感想ですが・・・第1番から順番に聴いたのですが、う~~~ん・・・この演奏・・・どう評価したらいいのだろうか?
正直、あくまで個人的な感想ですが、極小編成のため、大オーケストラでは聴けないような繊細さや、透明感は感じるのですが、やはり弦パートが弱く不満を感じる曲が多い。特にヴァイオリンは技量はありますが、ヴァイオリンの音自体、線が細く感じるためか余計、小さく聴こえます。
表現が悪いのですが・・・例えば、アマチュアのオケの練習などで時々、見られる光景?かもしれませんが、練習の日に団員の都合などでなかなか弦パートが集まらず・・・指揮者が困っていると、やっと1名~2名が集まったので「では人数は少ないですが、全体で音合わせをしましょう・・・」と、言って始まったオケの音のような感じがしないでもありません。もちろんプロですからアマチュアの音とは違いますが、聴いていると交響曲を聴いているのですが、弦楽四重奏曲を聴いているように感じる部分が随所にみられ、また、ヴァイオリンの音が管楽器のオブリガード的に聴こえる部分もあり、何とも不思議な感じです。管楽器は艶のあるような音ではありませんが個人個人の技量はなかなか。
各曲ごとの感想はなかなか難しいのですが、ベートーヴェンの交響曲で聴かれる重厚さは、全く感じられません。全曲とも、やや早めのテンポで進んでいきますが、テンポルバートや、激しいウネリなど、癖のある表現は、あまりありません。まあ、爽やかで少し繊細なベートーヴェン…といった印象でしょうか。
第3番「英雄」、第5番、「第7番」は、やはり迫力や重厚さに欠けるため個人的には不満が残ります。「英雄」の冒頭「ジャン ジャン」の強打の2音・・第5番の冒頭ジャジャジャジャ~~ン ジャジャジャジャ~~ンは、やはり大編成で聴きたい。これらの曲はやはり重厚さや迫力が欲しい。しかし第2番、第4番の第2楽章のような緩やかな楽章では、弦の音が繊細で美しい旋律を奏でます。
各曲のなかでは、第4番、第6番「田園」が出色の演奏。第4番は曲が進むにつれ、迫力も感じられ第3楽章、第4楽章は聴きごたえがあります。
「田園」は、全体的に見ると、やはりヴァイオリンが弱いのですが、不思議と違和感はあまりありません。また、管楽器が活躍する部分では、前記のように、ヴァイオリンの音がオブリガード的に聴こえることも多いのですが、何故か心地よい。
第1楽章は、どちらかというと淡々とした演奏で、録音のせいか、気のせいか、ヴァイオリンの音も他の曲より大きく聴こえ、アクセントもはっきりしています。第2楽章がなかなか素晴らしい。ここでの弦楽器は少ないながらも十分に旋律をうたっています。ただしテンポが少し早いのが私には残念。第3楽章も、やや速めのテンポ。少し荒いがまずまず、最も素晴らしいのは第4楽章の嵐の表現だ、極小オケなのにティンパニの強打による迫力がもの凄い。このティンパニーの表現には脱帽だ。こんなティンパニーを聴くのは久しぶりだ。全く違和感はない。第5楽章は全体的に少し荒いのが残念。ここは、もう少し旋律を歌ってほしい感じだ。
「田園」を敬愛しておられるブロ友のyositakaさん(ネコパパさん)がこの演奏を聴いたら、どう文学的な表現で、どのように評価するのだろうか?…といってもこの全集を個人的にオススメするつもりはありませんが…)なお、参考までに各楽章の演奏時間は次のとおり。
Ⅰ(10:51) Ⅱ(10:43)Ⅲ(4:50)Ⅳ(3:38)Ⅴ(8:18)
第9番「合唱」・・・この曲だけがライブ録音ですが、臨場感は感じられない。公開録音か? う~~ん・・・前記のようにヴァイオリン等、演奏者は若干増やしているが、これは私の好みの演奏ではない。まずは全体的にテンポが速すぎる。各楽章の演奏時間は・・
Ⅰ(14:50) Ⅱ(9:07)Ⅲ(12:01)Ⅳ(22:21) 全曲で約58分という速さ、ガーディナーが約59分と1時間を切る速さですが、これより早く、私の知る第九の中では、たぶん最もテンポが速い。特に第3楽章の12分という速さは、私にとっては全く受けつけない。独唱者もイマイチ・・特にバス独唱者はバスと表記がありますが、ハイバリトンで最初のレチタティーヴォの迫力や説得力が弱い。合唱はかなりの少人数のためか、言葉は明瞭。好印象ですが、曲全体からみると、1回聴けば私は十分か・・・
詳しい私なりの感想や評価は、書けませんでしたし、何も感想を書いていない曲もありますが、今までにないユニークなベートーヴェンであることは確か。しかしベートーヴェンの交響曲ということを考えると、やはり個人的には物足りなさを感じます。
ついでながら、94種類目の全集を予約しました。
ブルーノ・ヴァイル指揮/ターフェルムジーク・バロック管弦楽団の演奏です。カナダのトロントが本拠地、ちょっと気になるが期待したい。
この「交響曲」の書庫の中には次の投稿記事があります。
下記のタイトルをクリックすると記事に繋がります。(86種類目のベートーヴェン交響曲全集です)交響曲第9番「合唱」※文章中のyositakaさんのブログはこちらです。では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。